フィリピン・パブ☆彼女の2度目のサヨナラパーティ #38

フィリピン・パブ

その日、フィリピン・パブ「インパクト(仮称)」では、彼女の2度目のサヨナラパーティだった。帰国するのは、彼女ともう一人いたかもしれないが。あるいは、彼女だけだったかもしれない。

10年ほど前なので、覚えていない。ただ彼女は肩を露出した白いロングドレスを着ていた。
そのことは覚えている。
サヨナラパーティならではの派手な飾りつけは、この日も華やかだった。
客も、そこそこいる。

この日、彼女は、指名しても、いつもように、私に付きっきりとはならなかった。
15分もいたら、すぐ他所へ行き、しばらくして、また戻る。そして、また他所へ。
私のところにいたとき、私たちとは、ほぼ対面の遠い席に、
やはり彼女を贔屓にしていたらしい客がいて、その客が2-3人で来ていた。

詳しくは言わないが、羽振りがいいのか。金がらみで、
彼女にしつこくするらしかった。本人がそれを嫌だと言っていた。
だが、再び、ちいママの指示で、向こうへ行ってしまった。
私とシショウには、別のヘルプのピナもついており、私たちなりに愉しんでいた。

時折、彼女の方を見ていたが。すると、その彼女の指名客が、彼女をド突いた。
彼女は、そんなに弱い女性ではないが、「イヤーッ」というような、相手に抗らうような態度をみせた。
それは、悪酔いしている客の態度で、周辺のピナや客たちも、一瞬、そちらを見た。

それでも性質の悪い客はいるもので、その常として、
皆、受け流していた。再び、半分泣くような感じの声で、彼女の声が聞こえた。
シショウと顔を合わせた私は、シショウから、「マッチャンいいの?」と促された。
多分シショウは、私に、意図的に煽ったと、今でも思っている。

そのシショウは、まさか、私が思いもよらない行動にでるとまでは、
考えずにいたと思う。
私は、煽られたと感じてはいたが。
その瞬間、すでに私は、立ち上がって、期待に添うように正面の客の方へ走り出していた。

酔っぱらっていた私は突進はしていたが。相手のテーブル席の手前で、足をとられて、
相手客もそれを察して軽く交わし、私は身体ごとなだれるようにコケタ。
ピナの悲鳴が数名聞こえた。シショウが後で、
私の動きがまるでスローモーションのような動きだったと評して笑った。

私がヨロけたせいで、相手のテーブルが倒れたり、グラスが割れたり。
人騒がせなことは起こした。

幸いなことに、相手の客に手を出すこともなく、ただただ、一人、みっとなくヨロケタ私が、
突っ込んで手前で倒れただけだった。

相手の客は、「何だ、コイツ!」と私に投げかけたが。すでに、シショウを含め、店のマスターなども、事態に気づいて止めに入ったため。単なる私の愚かなパフォーマンスに終わった。
彼女もびっくりしたと後で、感想をもらしたことがある。

マスターからは、「もう今日は、帰って!」と私を諭すように、指示した。
私とシショウは、逃げるように、店を後にして消えた。

翌日、もはや彼女の居ない店に、再び行って、マスターに謝った。
「いいですよ。」と言葉少なに返した。
何事もなくその日は、小1時間で、軽く飲んで帰った。
ただ昨日のみっともない騒ぎを起こした私は、ピナたちからは、何だか受けがいいように感じた。

というのは、
昨日の客は、店にくれば、ピナたちに小金をあげていたらしいので、
その限りでピナたちには有難くても、決して客としての評判は良くなかったからだ。

彼女が帰国した後、数度、シショウと店に行ったが。段々、その回数が遠のいた。

私は、この日の事を、とても強く印象に残している。

そして、私が、みっともなくコケタと言う意味を、神の裁量だと感じている。
誰も傷つけることなく。穏便に。もちろん怪我もなく。
あまりに見事な落としどころを私の神が用意し、解決してくれたこととして。

どんなことにも、神が傍にいるのだと感じた瞬間として。
しっかり記憶に残っているのだ。

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