かなり以前のことになるが。
私自身の心の中に、あるイメージ化した小さな物語がある。
このネタは、どこで仕入れたものなのかすっかり忘れてしまったが、
ある老人の一点描だ。
老人が小さな池で、一人乗りの粗末なボートを浮かべて釣りをしている。
いつにも増して晴れやかな日だ。陽射しがこの森を暖かく包み込んでいる。
シンと静かな空間がここにある。時間さえないように感じる。
光をいただいたところの水面は、いま、眩しくキラキラと美しく輝いている。
どこかで魚がポンと跳ねたが、
老人は、まったく意に介していない様子だ。
釣りをする老人の手には、当然ながら、
木の枝で細工した手製の安っぽい竿がある。
水面に糸を垂れ、その時がくるのを穏やかに、
のんびり待っているのだ。
言っておくが、その釣り糸の先には、針がない。
魚を傷つけてはいけないと、端から付けていないのだ。
ひたすら糸を垂れ、釣りの気分を楽しんでいる。
それで十分なのだ。
老人には静かな至福の時が流れている。
もう、何時間が過ぎただろう…。
ふと、思うこともあるが。
老人にとっては、そんなことはどうでもいいことだった。
と、また向こうでポンと魚が跳ねた。
この恵まれた一瞬を生きていることに感謝を捧げた。……。
この話のネタもととイメージは、時が過ぎ、私の中で、
ときどき思い返すたびに、やや尾ヒレがついて変化しているかもしれない。
だが、現在の時点では、このようなカタチになった一点描が、心の中にある。
たったこれだけのことだが。
究極のポジティブというのは、こういうことかもしれないなと思う。
ポジティブさについて考えるときには、「心の姿勢」が一番に問題になる。
ジェフ・ケラーは、
「いつもうまくいく人の成功法則」(ジェフ・ケラー著 弓場 隆[訳]ソフトバンク文庫)の本の冒頭から、まず、「心の姿勢」あるいは「心の態度」を強く重視している。
初めてこの本を読んだときには、ちょっと、ユルイ感じがした。
しばらくたって、改めて、ページを読み返してみると、受け止めた印象が、今度は違う。
違う受け止めをしている。「なるほど…、そんなに心の姿勢が大事!だというか。」と、
捉えただけでなく、気持ちが新たになった。引き締まったという感じだろうか。
ジェフ・ケラーは、前出書籍の中で、
≪第1章 成功は心の中で始まる≫ 副題として、
”いつも楽しい気分で過ごす”というタイトルで、
この本を書き始めた。
成功法則の本として、彼は、いつも楽しい気分を作り出すことの大切さを、何が何でも、
一番に持ってきたかったということだ。
この副題の話は、要約すると、
2人の男女(サム=男とセーラ=女)の心の姿勢・態度を紹介している。昼の休憩時間のそれぞれの喫茶店での話だ。
2人の男女がそれぞれに、ほぼ同じような条件で、ウエイトレスが注文をとりにくるまでの時間や給仕のあり方、食事の出てくる待ち時間、清算の仕方までを。特別な違いもなく同じようなものだったときの二人の態度や受け止め方を読者に示した。セーラは、楽しく食事を済ませ、ウェイトレスとちょっとした会話さえした。
一方のサムは、「オレに近づくな」という頑なな態度を滲ませ、食事の出てくる時間にもイライラし、食事を終えて、ウェイトレスに料理の味に文句まで言ったという設定だ。
この2人の心の態度に対し、ジェフ・ケラーは、次のように論評する。
「セーラが世の中に対してポジティブな心の姿勢だったのに対して、
サムはネガティブな心の姿勢に固執していた。」
(前出「いつもうまくいく人の成功法則」より引用)
どちらが、好感がもてるかは、言うまでもない。
そして、ジェフ・ケラーは、強調して言う。
「あなたにひとこと言っておこう。あなたの心の姿勢は、
あなたが世界を見るため心の窓である、と。」
(前出「いつもうまくいく人の成功法則」より引用)
このセーラやサムの2人の心の姿勢の違いが、そのままそれぞれの世の中を見る眼となる。
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