彼女との親しさが増すに連れて、店外デートをするようになった。
これは、彼女の意思に反して、簡単にはできない。
店側が売上を上げる営業として、その活動として、認められないとダメなのだ。
ある程度、店に来ている客であることも加味されるようだ。
頻繁に店に通う私の場合は、その点は、全く問題がなかった。
オーナー(日本人らしい)の顔は、一度も見たことがない。
だが、彼は、私が彼女に入れ込んでいるということを、ミーティングで、
ちいママなどの話などから、聞いて知っていたのだろう。
彼は、バカな「カモ」が来ているとほくそ笑んでいたに違いない。
事実、私は愚かな「カモ」なのだから。
店外デートは、店の許可が必要で、そのあたりは、厳しい。
理由は簡単だ。
パスポートは、店側が預かっているが。それは、彼女らが逃亡するのを防ぐためだ。
そうした事例は、偶にあるらしい。
行方不明者を出せば、営業停止などの店の責任が問われるからだ。
その点は、かなり厳しく、管理していたらしい。
事実、
彼女の言葉によると、
寝込んだ「朝の4時頃」に、雇われ店長が、
彼女たちの宿舎に人数確認などをするため、監視に来ると言っていた。
それも毎日だったそうだ。
この雇われ店長は、愛想はない。もの静かで大人しく、
余計なことを一切、言うこともない。堅気ではないのかも…と思ったこともある。
どこか近寄りがたい独特の雰囲気を持つ男気のある人物だった。
一度も、口を聞いたことはなかったが。
バカなことをしている私と、妙に、分かり合えるような気脈は通じていたように思う。
この雇われ店長について言えることは、私には、これだけしかない。
前振りが長くなったが、数回、彼女と店外デートをした。
店外デートと言っても、「同伴」が前提だ。
「同伴」とは、知らない方もいると思ので、簡単に説明しよう。
一定の制限付きで、彼女と外で会えるシステムだ。
当然、店のオープンする頃には、戻って、
店の客として、そのまま私も入店するシステムだ。
そのうちの店外デート(同伴)の一つで、お台場へ行ったことがある。
どのように行ったのか、振り返っても思い出せないが。
恐らく、りんかい線を利用したのだろう…。
私にとっても、はじめてのお台場であり、
どこを何を見て歩けばいいのかもわからない。
ともかくヴィーナスフォートへ行ったことは強く覚えている。
そこで、二人で写真を撮った。「写るんです」というフィルム付きの簡易カメラで。
まるでギリシャ神話のような世界が、天井いっぱいに描かれていたように思う。
白衣をまとった女たちが、青い空を舞うように。古い記憶なので間違っているかもしれない。
ただそんな印象のイメージが今でも残っている。こんな空間を、
彼女がどう思ったかはわからない。