フィリピン・パブ☆神は無条件の愛で満ちている #15
先進国の多くの日本人は、発展途上の国への優越感から、
彼女たちを優位な立場で扱えると潜在的に勘違いしているのだ。
それはとんでもない誤りだ。
私にも、当初はそんな気持ちが少しもなかったかというと、
決してなかったなどとは言えない。
だが彼女を指名し、彼女と接しているうちに、一人の人間として、
あるいは一人の女性としての尊ぶべき生きざまを見せられる。
そして学校も、貧しさから、まともに行っていないこと。固より行ける余裕も環境にないこと。
彼女のように、
15才以前から、本人曰く12才ぐらいから、単身で近隣の外国で出稼ぎに出て、
好むと好まざるとにかかわらず、そこに仕事があれば、
「働く」「禄を得る」「家族に仕送りをする」などを
使命としている女性が大勢いるのだ。
フィリピン人というとりわけ明るい性格の彼女たちは、
豊かな苦労知らずの私たちが知り得ないところで、
どれほど大粒の涙を流してきたのだろうかと思わされる。
そうした彼女らの事情に真摯に向き合うとき、私たち日本人は、
多くの場合は、いつでも仕事のできる環境にあり、
溢れる商品群の豊さや国の制度や社会保障などの充実にも恵まれている。
しかも、
その豊かさの中で、ある程度のわがままも言える権利も自由も享受している。
その「陽」の部分の反面で、
いつしか奢りに復讐されていることに気づかないまま、
豊かさの恩恵からは程遠い発展途上の国の人々を、
安易に低く見積もって見ていることの恥を知るようになる。
その意味で、シショウは、月収も普通のサラリーマンより、はるかにあったし、
子どもたちに恵まれ、持ち家も有り、仕事も、そこそこうまくいっていた。
これからますます上向きになる要素も十分、見えてもいた。
シショウは、女性には、優しく接していたと思う。
実際、気のいい優しい男だ。
どちらかと言えば、万人受けするタイプだと思う。
事実、私にフィリピンパブの費用を負担してくれていたのだから。
ただ、このマリーに対しては、浮気相手と別れたこととも重なり、
多少、「焦り」。
つまり急ぎ過ぎたのかもしれない。
マリーにとっても、
故郷には、仕送りを待っている家族がいて。
そんな生活を背をって来ている。生き方が、真剣で重い。
経済的な自由を得ている彼は、
仕事と同じように何らかの結果を求め過ぎていたのかもと、
ふと思うことがある。
その余裕のない気持ちが、ズレとなって、
何となくマリーの気持ち固くしていたのだろうかと推測している。
私は、フィリピンパブで遊ぶのに、ヨコシマな気持ちを持つなとは言わない。
言うつもりもない。フィリピン・パブは、実際、そういう社交の場の一つでもある。
そして、彼女たちも、基本的には、そこはしっかりそういう場であるということを理解している。
できれば、豊かで素敵な、包容力のある日本人と結婚したいとさえ思っている。
とても期待もしているのだ。全員ではないと思うが。
日本人は、すべての人が「お金持ち」だと、勘違いしているし、
日本人に対しては、好感をもって、強いあこがれもあるのだ。
シショウが、どこか急いでいたのは、マリーの事情もあった。
というのは、彼女が日本に滞在できるのは、そう長くなかったからだ。
やはり全体としては「売上げ」や指名の数というのもあったのだろう。
3カ月未満で、帰国することになっていた。それが、間近に迫っていたのだ。