夢見心地☆バランスを欠いたとき ★20#0441

フィリピン-ピリピン

私の身に起きた遠い昔の実話だ。

とりとめのないことを、あえて言おう。
一週間か10日ほど前か。あるいはもう少し前だろうか。
路傍の植え込みの周辺で、フラフラと飛ぶモンシロチョウの姿を見かけた。

温かい日和から、気づけばこれから確実にやってくる蒸し暑い日々へと変わりつつある季節の狭間でのことだ。
たかが蝶が飛んでいる風景を見るぐらい特段珍しいことでもなんでもない。

まったくその通りだ。

だが、それは自ら置かれている次元を当たり前のように一切疑わず。
周囲の状況に、それまでどおりの習慣と惰性で生き、
普通である風景に馴れ過ぎた感性がそう思わせているだけに過ぎないようだ。

私には、その風景が少し違っているように見えた。だから、
いまもそのことに意識がフォーカスしている不思議を感じる。

蝶は、私の意識にただ偶発的に飛び込んできたのではない。
必然性の結果だ。
どこか別次元からのメッセージをきっと携えている。

でなければ、現れない。

現れる必要がないのだ。
あるいは、草むらの向こうから、私の嫌いな犬に吼えられても、
その方がふさわしいはずだった。

いまそこにいる蝶は、
ある意味、私の無意識の要請で現れたもの(=現実化されたもの)だと確信している。

少なくも、少年期に、虫を追いかけた時代のなごりが心地よく、
懐かしくあって、それを求めたのかもしれない。

この比較的カラッとした天気。コントラストが強くなる季節が、誘引となって、
私の中の古いページをなぞったのかもしれない。

いま見かけたその蝶から発信されているはずのメッセージについては、
意味までは、正直、分からないが。これ見よがしにフワフワと私の周りを飛んでいるのに。

だとしても、
必ず意味があって、私の前に現れているのだと、そう思えた。
少なくも、人生のバランスの意味を伝えているのだろうとは思う。

どんなバランス?
何か、バランスを欠いているということだろう。そして、
蝶の人生ラインと私の人生ラインが同じ物理的現実の中で、
必要に応じて、交差したのだ。

蝶には、蝶の都合で、私には、自覚できない私の無意識の都合で、
どれほどの意味があるかと言えば、おそらく、さほどの意味はないのかもしれないが…。

蝶の舞う様子は、まるでWindowsのダイアログにおいて、ダウンロード時に表示されるデータファイルが、ヒラヒラと舞いながら一方から一方へ保存されていくあのアニメーションの動きのように思われた。そのように、
きっと、私に何かメッセージを運んできているんだろうと。

バランスという意味では、やや話が少し変わるが。
関連で、以下に申し伝える。

私は、30代前半に、映像制作の世界で、ディレクターになろうと、
人生ではじめてのハッタリに出た。

それまで所属していた会社が事実上、合併などにより崩壊しかけたことで、
自分の身の振り方を考えなければならなかったからだ。

ピンチをチャンスに変えた。そんな格好の良いものではないが、そうするしかなかった。
いつまでも下っ端のペイペイでいるわけにもいかない…と思ったからだ。

はっきりいえば、CMの世界は、ある意味、ハッタリが通用するそんな程度の世界なのだ。
いやそれしかないといえる。
実は、自分に才能があると思うこと自体が、間違いで。持ち場、持ち場の誰かが、それなりにみんなうまくやってくれるから、結果、ハッタリを押し通すことができる。

ただし、ハッタリについては、どこまでも貫かないと、いけない。
「どこまでも自分は凄い!」のだと見せ掛けだけでも、
思わせ続けないといけない。それはある意味、業界に対する誠意でもある。

なぜなら、制作の現場で、数百万という
多額のお金が動いているいる。
大勢の人が関わっている。その途中で怖気づくと、必ず失敗する。

「ボク…。いや、自信ありません。」なんて言うのは、ご法度だ。
そんなの通用しない世界だ。ならば、最初からすべきではないのだ。

ある時、いよいよハッタリが通じて、
気持ちだけでもディレクターとなったとき、あるCMの制作会社に入社した。

つまり社内ディレクターになった。

しかし、会社自体にまったく仕事がなかった。私がその会社に入社した時点で、
2年間のうちに2本しか制作したものがないのだ。正直、驚いた。

なるほどとも思った。だから、私のように実績のない人間が、ディレクターとして、
とりあえず採用されたのだなとも思った。

そして、そこでは、
社長以下、電通や博報堂、その他の広告代理店に営業周り(=仕事をくれと依頼する。)を
せざるを得なかった。

私も当然、巻き込まれた。連れ回されたた。なんら実績もないのに先方に紹介される。
それだけでなく、CMの企画コンペに必ず付き合わされた。 

今日のCMの企画のオリエンを受けて。明日、午後1には、
企画出し(プレゼン)というスケジュールを常に求められた。

それが、社内ディレクターとしての責務になっていた。
コンペに勝ち仕事をいただくことが自分の使命になった。
だが、そんなにうまくいくはずがない。
しかし、結果、責任は常に、自分に向けられた。

私は、私でその責任の重さで、どうしようもなく苦しんでいた。
コンペに勝つことが、会社にとっての存亡を意味するからだ。

しかも、コンペに勝つことは容易ではない。一つのCMが企画で決まるまでには、
数社で、数十案(20-30ぐらいの案)が検討される。
それでも、決まらないことは、常にある。

私も、毎回、4-5案の雑な企画を出していた。時間もなく、無から有を生む、
それはほんとうに苦しい作業だ。
企画力が求められる。仮に企画力があっても、
それだけで、仕事はもらえない。

CMの世界は、さまざま要素が絡んでいる。会社間の人間関係、繋がり、実績だとか。
すべて日本的な縛りに翻弄される。公平などというものはない。そんなものがあると思うのは、
無意味な幻想に過ぎない。

私に企画力があったかどうかは、私は、自信を失った立場なので、
それを言う資格はないと思っている。なんと言おうと、結果も出ていない。
大ぶりの空振りばかりだ。

しかし、
そんな私にも、たまにバットにボールが当たることがある。
チャンスになりそうなときはあった。
数回はあった。

数はきわめて少ないが、
モノになりそうな企画で、自身でも、これならとイケると思う企画はあった。
としても、
クライアントからも、企画はいいんだけどと褒められながら、
なおコンペ中で、最後の土壇場で。

今回は、順番で別の代理店に任せるというタメにされただけの
引き合いの対象になっただけのこともある。

もしかすると、固よりダメで。
断りの口実のための先方の方便だったのかもしれない…。

結果が出るまでの1-2ヶ月のそれまでの努力が、一瞬ですべて無駄になる。
だが、手ごたえというのは、少なからず感じるものだ。
そして、
こちらのとても力の及ばない次元で、スポイルされることは、
ささやかなヒットの中に2-3あった。

最初から出来レースというのは、
日本的な商用ベースには常にあるのだということを思い知らされることもあった。

力の強いところは、常に強いのだ。力の無いところは、常に無いのだ。
それが、日本の広告の世界。私は、そう思っている。安っぽい青春ドラマの理想論など、
語る気はさらさらない。

そうしたプレッシャーの中で、私の所属していた会社は、どんどん厳しい状態に置かれていた。
借金を重ねていたのだ。どうにもならないほどに。それは、私のストレスを増幅させた。

それでも企画コンペにさらされた私は、
ある時、胸や腰にかけて、理由もなくボリボリ掻いていた。
常に、イライラしていた社長からも、
何か伝染性の皮膚疾患があるかのように気持ち悪がわれた。

失礼な!
冗談じゃない…。

私は、私なりに分かっていた。ひどくバランスを欠いたのだ。
ストレスが過剰だったのだ。

そして、医者にも通い、
神経的な接触性皮膚炎であることを知らされた。
湿疹と呼べるようなものはほとんどなく、ただ痒い。

下着が肌にふれるだけで、ムズムズと痒くなるような疾患だった。

それを機会に、私は肌が弱いということが、季節の変わり目ごとに、
度々体験するようになった。

その会社から、2年ほどの在籍で、契約解除になった。
私は、ダメの烙印を押され用ナシになった。
私は、それでいいと思った。

以後、フリーとなったが。

私は、私で無能を感じた瞬間でもある。
当初、どうしていいかわからなかった。しかし、

結果、フリーは、私の性分には合っていたようだ。しばらく苦しい時期があったが。
私は、生き生きと仕事が出来たからだ。
それなりに仕事に恵まれ、金銭的にも一時期、恵まれたこともある。

繰り返しになるが、私はその会社勤めをしているとき、精神的に大いにバランスを欠いていた。
それが、心因性の疾患に結びついたと。

バランスを欠くというのは、私のような皮膚疾患という状態で出ることもある。
それ以外のほかの何かで出ることもあるのだろう。

バランスを欠くと、必ず平衡を保とうとうする働きが作用する。
自身のバランスには、十分なケアが必要だ。

バランスということで、話が冗長になってしまったが、元に戻そう。

私は、蝶に一瞥をくれて、その場を後にした。その姿は、まるで白いメールのように見えた。
もう一度、言うが。蝶の出現は、パラレルな異次元からのメッセンジャーだと思っている。

それはさりげない風景の中に、ポンとメッセージを携えて現れるものだろうと思う。

蝶が現れたそのメッセージについて、その意味をしばらく考えてみようと思い続けた。



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夢見についての気づき 2020年版 Index(古い順より)
https://isle23ch.com/philippines-pilipin/yumemi/1084/

夢見についての気づき 2019年版 Index(古い順より)
https://isle23ch.com/philippines-pilipin/2798/

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