かなり前のことになる。昔といってもいいほど前のことだ。ある休みの日曜のことだった。
川崎の映画街「チネチッタ」へ行った。映画好きで、川崎に出向いたときのこと。
ただ、見たいと思う映画はなく、というか、ほぼ頻繁に映画はみていたので、見る映画がなく、
ブラリとしてしてしまった。
結局。この見る映画はなく、目的を失った感じだった。そこで、ただ川崎のそのチネチッタ街をたださまようだけになった。
そのときに、何気なく、ゲームコーナーで、時間を潰した。といっても、ゲームは好きではないし、やる気も起きない。ただフラッとそのゲームセンターに立ち寄っただけだった。ふと、耳に残るサウンドが、聞こえた。何でも「ブラック ソウル ワッハハ」と、女性コーラスの合間に、低い男性の声で、そう言っているように聞こえた。
そのサウンドが聞こえたのは、大きなバイクがあり、ハンドルの先にモニターがあって、ゲームをする人は、そのバイクにまたがる。画面には、ゲームする人に見立てたキャラクターが、実物のバイクに似たバイクに乗って、夜のハイウェイを走りきるというものだ。背景がほとんどなく、バイクとキャラクターだけが、ハイウェイの道をどこまでも行く。
そのコースを無事に乗り切ると、ゲームオーバーとなるもので、多少難易度のあるコースを走るという設定だ。このバイクの疾走するそのBGMとして、 「ブラック ソウル ワッハハ」
と聞こえる曲が流れていた。私は、この曲調が何となく感性にぴったりとして、好きだった。
しかし、曲名がわからない。何を唄っているのかもわからない。イライラした。
ただディスコサウンドだということだけはかった」。いつか分かるだろう…と、そのままにした。ただ時代は、もはやディスコサウンドが流行した時代からかなり久しくなっていた。だいぶ月日が流れていた。
その件の曲は、前にも、どこかで聞いたことがあったように思った。だけに、この曲なんて曲何だろうとずっと、気がかりになっていた。
それから、かなりの年数が経っていた。私は、その間、割と、この曲のイメージとバイクのゲームのシーンが好きで、思い出していた。そして、やはりなんという曲なんだろうか。と、気にはしてみるが、分からない。音楽に詳しそうな人物に、「ソウル ブラック ワッハハ」という曲知らないか聞いてみたことさえある。だが、わからなかった。
それから、また数年が経ち、現在では、インターネットが普及している。特に、YouTubeには、懐かしいサウンドがあったりすもする。この中で、ディスコサウンドから、私が気になる曲を探してみた。すると、なかなか見つからない。あるとき、「ジンギスカン」を見つけ、「あ!これ、これ!…え?これだったか?」何となく、違うな…と思って。またわからなくなった。
さらに、1-2年後、ある日、
「ブラック ソウル ワッハハ」という曲名が分かった。YouTube上で、やっと見つけたのだ。
曲名は「ソウル・ドラキュラ」だった。「ドラキュラ?」なんだそんな曲だったのか…とがっかりしたが。確かに、曲は、あの若いころ、川崎のゲームセンターで聞いた曲だった。
女性コーラスのスキャットの部分が好きで、この記事を書く時にも、再び聞いてみた。と、同時には、私は、あの意味不明なゲームの画面を思い出す。モニターのキャラクターは、宛もなく、夜のハイウェイを走る抜けるというだけのゲーム。あのキャラクターは、何を考え、どこへ向かおうとしているのか。
それは、まさしくその頃の私自身でもあったのかもしれない。自分がどこへ行こうとしているのか。ただ目の前に現れた現実に押し流されて生きていたように思う。
そして、そのころのことを思いながら、今思う新たな思いは、思えばいつか叶うという実感だった。たいしたことではないが、求めるものの大きさにはかかわらず、望む出来事を思うことが、現実化することだと、今は理解している。