夢見心地☆心の海 ★20#0311

フィリピン-ピリピン

かつてのソビエト体制下の映画で、アンドレイ・タルコフスキーのSF映画「惑星ソラリス」という映画がある。映画は、やや難解で魅惑的な映画の一つだが。際立って優れた作品でもある。

原作はポーランドのスタニフ・ワム・レムの作品「ソラリスの陽のもとに」だ。
映画は、原作では感じることのなかった陰鬱さや荒廃が目立っているように思う。
詳細なあらすじは述べないが。

近未来の話で、謎の惑星ソラリスの軌道上を周回する観測ステーションが原因不明の混乱に陥っていた。そこで主人公の心理学者クリスがステーション内で何が起きているのかその原因を調査するために送られる。そして自らもまたそのステーション内で混乱を招いている現象に遭遇する。

わずか、3人しかいないはずのステーション内で、異形の物質的存在を眼にするようになるのだ。さらには、すでに夫婦間の不信と不和が原因で自殺したはずの妻のハリーがそこに現れたのだ。それは幻影でもなく、霊的な存在でもなく物質的存在として登場してくるのだ。

その現象に捉われることなく、何度か抹消する方法を試みるが、再び現れるか、あるいは蘇生されてくる。その物質的存在は、登場するたびに意識が深まり、妻のハリーの内面により近くなっていく。クリスとの関わりを深めていくのだ。ついには物質的存在であるその妻を愛し、しかも仮の妻ハリーまでが苦悩してしまう。

その物質的存在のハリーは、実は、クリスの意識下にあるハリーの姿そのものだったのだ。
このステーション内に起きていることは、他のスタッフにも同様のことが起きていた。
クリスが、当初、このステーション内で眼にしていた異形の物質的存在は、他のスタッフの意識下によって具象化されたものだった。

これらの同種の現象が混乱をもたらしている要因であることが分かってくる。
ここで起きている現象は、
惑星ソラリスによるステーション内の人間とのコンタクトの手段であり方法なのだという推測が、映画の終盤でようやく分かってくる…。

さらにいえば、
そこに現れる人間のような形をした物質的存在は、すべて登場人物の内面にある深くにある意識として根付いている苦悩や懺悔などの物質化の象徴だった。

惑星ソラリスとは、この惑星全体が知性の海そのものだったのだ。
エンディングは、知性の海に覆われた惑星の姿を見せて終わる。

映画のトーン自体は、あまりに苦悩に満ちている作品だ。

私は、この映画の評論をしようと思ってブログを書いたわけではない。この映画について、いまその感想が、初めて観た時とは、かなり大きく変わった点に注目したからだ。
映画についての評価点は、変わらないが、
受け止め方が変わってきたことをあえて取り上げたい。

当時は、感傷的にこのグレードの高い映画を観ていただけだった。そして惑星ソラリスが投げかけている意味を探っていた。そしていまは、惑星ソラリスこそは、
潜在意識の象徴そのものだと受け止め、いずれこのブログで語りたいと思っていた。

この映画は、陰鬱的だと前述したが、
もし、主人公のクリスをはじめ、ステーション内のスタッフ全員が、
惑星ソラリスの知性の働きに気づき、ネガティブな思いを一切捨て、ポジィティブな思いに終始していたら、どうだったろう…とも思う。

この映画は、きっととんでもなく明るいものになっていただろうと思うと、なんだか面白い。

しかし、映画の中では、それぞれの乗員の心の中に、解決できなかった複雑な思いがくすぶったままで居たために、苦しんだ。ステーション内の乗員一名は、クリスがこのステーションに乗り込んで来る前に、すでに頭が混乱して、自殺を遂げていたという設定になている。ビデオレターの形式で、その告白が綴られている。

ポジティブな心構えでいることができていたら、
この惑星ソラリスは、まさに願い達成の海になっていたはずで。
うちでの小槌のように、バンバン願いを叶えて、乗組員は、毎日が幸せで居られただろう。

もしかすると、その後の映画「ザ・シークレット」の前に登場した惑星ソラリス版の「ザ・シークレット」になっていたのかもしれない。

ただ、主人公クリスの場合は、事実を受け止めやや異なるが対応をとるが、他の3人の乗員は、
幸せの絶頂を創造し体験することは一切なく
むしろネガティブな思いを持ち込んだまま、最悪な状態を作り出してしまった。

この映画は、もちろん極端ではあるかもしれないが、私たちの誰もが、心の裡に、惑星ソラリスを抱えており、
私たちの心構え次第で、良い意味でも、あるいは、悪い意味においても、
どのようにも将来を創造することができることを、ビジョン化して見せた作品だと今は思う。



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